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QS世界大学専攻分野別ランキング2015 解説記事:経済学コース編

ここ2年くらい、ピケティの『21世紀の資本』※という700ページもある経済学の専門書が世界中で空前のベストセラ―になっています。

この著作では、r<g 【return:資本利益率<growth:経済成長率】というシンプルな不等式による理論をフランス、アメリカの経済の実証DATAから検証して、市場主義に対するアンチテーゼを唱えています。

この背景には、リーマンショックや日本での『格差社会』の進展(=中産階級の解体が進行)する状況に対する大きな危機感があり、ピケティブームにつながっているのではないかと筆者は考えています。※トマ・ピケティ『20世紀の資本』みすず書房

今回は伝統のある名門大学と比較的歴史が浅いが成長株の大学を紹介、それぞれの大学の学風の違いに焦点を当ててみます。

ハーバード大学 専攻科目別4位 総合2位 

ハーバードは1636年創立のUSA最古の大学です。8人の大統領、7人のフィールズ賞受賞者、100人以上のノーベル賞受賞者を輩出したUSAで最もプレステージの高い大学の一つです。

経済学の分野では、ジョン・F・ケネディ大統領のブレーンだったガルブレイス以来、アメリカ民主党政権の経済政策の中枢には常にハーバード大学出身者がいました。この大学の研究者は大雑把に言って政治的にはリベラル、経済学の立場としては市場経済擁護には批判的な立場をとり、社会政策と連携する積極的経済政策を行う傾向があります。

1998年にアジア人で初めて、【所得分配の不平等に関する厚生経済学】でノーベル経済学賞を受賞したアマルティア・センもこの大学で教鞭をとっています。日本人では、戦後第一回経済白書を執筆し、一橋大学学長、ハーバード大学客員教授を歴任した故都留重人はハーバード大学、大学院卒業。一橋大学名誉教授、政府の委員や企業の相談役を多く勤める中谷巌はハーバードの経済学部博士号を取得したことで知られています。

シカゴ大学 専門科目別5位 総合10位

ハーバードとは異なり、シカゴ大学にはどちらかというと市場の機能を肯定的に評価する新古典派経済学系の多くの研究者が集まり、今もその伝統は継承されています。かつてフーリードマン、ハイエク、ステーグラー、等の、20世紀の経済学の大家たちが在籍し、シカゴ学派と呼ばれています。

アメリカ経済学の本丸として経済学の世界に大きな影響力を持っています。経済政策や国際金融学の分野では、共和党系のブレーンになった学者も多く、ノーベル経済学賞受賞者を輩出しています。極めてアカデミックな大学です。

日本では白川前日銀総裁がシカゴ大学経済学修士であることもよく知られています。

ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)  専攻科目別4位 総合35位

UKをはじめとするヨーロッパ型の専門高等教育はレベルが高いことで知られています。LSEは、理工学部、生命科学系学部等がないため、企業から資金提供が少ないこともあり、総合力を問われるランキング総合順位では、順位が下がってしまいますが,経済学の分野でいえばLSEは群を抜いた強みを発揮します。

LSEは12人のノーベル経済学賞を輩出しています。日本人では故森嶋通夫氏がよく知られています。故人は20年にわたってLSEで教鞭をとり数々の優秀な研究者を育てました。

専門教育優位の風潮もあり、経済学の分野では、名立たるオックスフォード大学やケンブリッジ大学を押さえて4位。世界最高レベルの秀英な研究者、学生が世界各国から集まり、議論を戦わせる贅沢な環境で有名です。

計量経済学、マクロ、ミクロ経済学、国際経済学から開発経済学、政治経済学、貧困研究まで幅広い分野にわたって先端的研究が行われています。学部レベルでも、大学1年から専門的で議論とリサーチに直結するレベルの高い授業が行われていて、世界中のトップ大学の大学院への進学率が高いことでも有名です。

オーストラリア国立大学(ANU) 専攻科目別26位 総合19位

経済学の分野は、国際企業の連携だけでなく、政府、公共セクターの協力や連携が各種リサーチを行うのに必須となります。その点、オーストラリアの国家行政を集中させた政治中枢都市として名高い首都キャンベラに位置するANUは大きな強みを発揮します。

アジア島嶼諸国へ長年のODAの実績、アジアとの政府レベルの援助、大学教員派遣の実績等がそれを支えます。

また、顕著な特色としては、オーストラリアはアメリカとは異なり、福祉国家を堅持したので市場優先の経済学には距離を置く立場が多いようです。

更に、ANUは開発経済学、国際金融経済学等の分野に強みを発揮します。世界中から研究者、教授陣と学生が集まる太平洋地域の核になっています。

ボッコーニ商科大学(イタリア) 専攻科目別17位 総合:専門単科大学のためランク外

特徴のあるコースがあり今後の伸びが期待されている大学の筆頭としてご紹介したいのが、ボッコーニ商科大学です。この大学は、1902年に創立された、イタリアミラノにある専門大学です。

経済学、公共政策学、国際ビジネス、国際政治学、技術経営学の各分野が極めて高いレベルの教育を行っている極めて若い大学です。

経済学では計量経済学、金融経済学が強く学部レベルから英語で専門的な授業とリサーチ教育が行われる一方で、【経済学とメネジメント】【経済学とファイナンス】【経済学と国際政治学・公共政策】というような複合型のカリキュラムが選択でき、グローバルビジネスの担い手たちを育成する仕組みが充実しています。南ヨーロッパの経済学、グローバルビジネス教育研究の一つの中心と言えます。イメージは【ミラノにあるグローバルで先鋭な一橋大学】と言ってもいいでしょう。

香港科技大学 (HKUST) 専攻科目別30位 総合28位

1991年に創立された若い大学。QSの総合ランキングで28位、TOP50 UNDER50(創立50年以内の大学のランキング)では、堂々2位です。

理学部、工学部、経営学部、人文学部、社会科学部の5学部で「授業はほとんど英語で行われ、大学院生の比率が多いリサーチ型の大学です。経済学分野では 計量経済学、マクロ経済学、数理経済学、金融工学やオペレーションリサーチ等の隣接応用領域でも強みを発揮します。

隣接の深圳と広東には大学院のブランチキャンパスを持っています。海外出身の研究者、学生が多いことも有名です。

シンガポール経営大学(SMU) 専攻科目別51-100位 総合:専門単科大学のためランク外

2000年にペンシルバニア大学ビジネススクールのウォートンスクールをモデルにして設立されました。シンガポールの郊外に位置するシンガポール国立大学(NUS)、ナンヤン工科大学(NTU)とは異なり、シンガポール市内中心部に位置し、実業界とのつながりが強い大学です。

シンガポール高等教育の国家戦略は明確で実学重視。アントレプレナー(起業家)やイノベータ―を育成することを目的にしていて、海外からの教授陣や学生も多く、知的に切磋琢磨する環境は万端整っています。

経済学の分野では、計量経済学、金融工学や国際経済学のスペシャリストを海外からも多く雇用、大学院のレベル向上に余念がありません。

理工系や生命科学系学部がないため総合ランキングに入ることは、当分難しいと思われますが、シンガポールの数学教育のレベルも相まって少なくともSMUの専門分野ランキングが今後向上することは間違いありません。

経済学修正

(続く)次回は物理学・天文学【Physics & Astronomy】を取り上げます。

※「QS世界大学専攻分野別ランキング2015 解説記事:経済学コース編」は、世界大学評価機関「Quacquarelli Symonds(QS)」が公表している「QS World University Rankings by Subject 2015」のデータに基づいて、記事作成、編集しています。

>QS世界大学総合ランキング2015/16はこちら。

ワールドクリエィティブエデュケーション CEO
オービットアカデミックセンター 代表 後藤敏夫

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